【職業訓練でWebデザイナーに】求職者支援訓練の内容と体験してみた感想

【職業訓練でWebデザイナーに】求職者支援訓練の内容と体験してみた感想

自分は30を超えて実務未経験からWebデザイナーになりました。
その経験をもとに、これから志望してる人の参考になりそうなトピックについて書いていきます。
『【未経験からWebデザイナーになるには】目次』

今回の内容は【職業訓練でWebデザイナーに 求職者支援訓練の内容と体験してみた感想

「職業訓練」の存在は知ってる方も多いでしょう。
「無料で国が技術の習得や就職の支援してくれる制度」「ハローワークを通じて申し込むもの」という印象があるかと思います。

概ねその通りですが、「職業訓練」というのは総称で、正確な名称は「公的職業訓練」といいます。

総称なので、条件や内容によって「公共職業訓練・求職者支援訓練・雇用型訓練」などいくつか種類があります。
(「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」を合わせて「ハロートレーニング」とも呼ぶそうです。)

この記事では自分自身利用させてもらった「求職者支援訓練」について紹介します。
制度の概要や体験して思ったメリット・デメリットなどを挙げていきたいと思います。

「求職者支援訓練」では「パソコン基礎・Webデザイン・プログラミング・アプリ開発」といったIT・Web関連の講座が比較的多く、Webデザイナー、プログラマーを目指している人はぜひチェックしておきたい制度です。

無料どころか、条件があえば毎月給付金を受給しながら勉強と就職活動ができます。

公的職業訓練とは

簡単に説明すると様々な分野の知識・技術の講座を数ヶ月〜半年くらいの期間で学べて、就職を支援してくれる制度です。

公的職業訓練にも種類が色々あり、次のページのチャートで確認できます。
[参考]ハロートレーニング

(※図や名称が記事作成時と異なるため、リンク先を参照ください。)

自分も初めて知ったものもあり、結構ややこしいですね…。
(「公的職業訓練」の中に「公共職業訓練」があるというのもややこしい…)

開講されてる講座は時期や地域によりますし、受講できる資格があるかも人それぞれです。
申込み手続きはハローワークを通して行うので、検討される方はまずはハローワークに行って相談してみるのが一番だと思います。

『全国ハローワークの所在案内 | 厚生労働省』

以下、自分が受けた「求職者支援訓練」について詳しく説明していきます。
当時(4、5年前)は基金訓練という名前でした。

「求職者支援訓練」について

まずは概要から。

[参考]「求職者支援制度のご案内」

【制度内容】

  • スキルアップのための職業訓練を無料で受けることができる(※テキスト代等は自己負担)
  • 訓練中~訓練終了後3か月間、ハローワークと訓練実施機関が二人三脚で就職活動をサポート。
  • 一定要件を満たす場合、受講補助として月10万円が支給される。(-不正受給について、不正受給額(3倍額まで)の納付・返還のペナルティあり)

【対象者】

  • ハローワークに求職の申込みをしている方
  • 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でない方
  • 労働の意思と能力がある方
  • 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めた方
【コース】

基礎コース(訓練期間:2ー4か月):
…社会人としての基礎的能力及び短時間で習得できる技能等を付与する訓練
実践コース(訓練期間:3ー6か月):
…就職希望職種における職務遂行のための実践的な技能等を付与する訓練

大きな特徴は求職中で、雇用保険を受給してない方が対象ということ。

「公的職業訓練」には「公共職業訓練」というのもありますが、「公共職業訓練」は主に雇用保険を受給できる人のための職業訓練になります。

(雇用保険を受給できる人でも、「求職者支援訓練」を利用できる場合もあるし、雇用保険を受給できない人でも、「公共職業訓練」を受講できる場合があるようです。)

「基礎」と「実践」2つありますが、どちらでも選べたハズです。
「基礎」を受けた後に「実践」を受けることも可能ですが、それ以上の受講や「基礎→基礎」、「実践→基礎」といった受け方はできなかったと思います(要確認)。

基礎コースは2〜4か月とありますが、自分が受講した基礎コースは半年間でしたね。
自分は条件に適わずもらえませんでしたが、給付金が10万円というのも同じです。

「求職者支援訓練」のコースについて

この「求職者支援訓練」では「Webデザイン・プログラミング」関連の講座が比較的多く開講されています。
今(2017年6月現在)東京で募集されてる実践コースを確認したら、次のようなコースがあります。

「求職者支援訓練(募集中) | 東京労働局」

  • 基礎から学ぶWebデザイナー・Webディレクター養成科
  • Webデザイン専科
  • Webクリエイター養成(夜間)科
  • 実務で使えるパソコン科
  • 事務・簿記・ホームページ更新スタッフ養成科

その他、「介護職員・医療事務・インテリアデザイン・フラワーデザイナー」などなど。
講座のラインナップは以前とあまり変わってないようです。

「求職者支援訓練」入校までの流れ

ハローワークで求職申込みを行い、制度の説明を受けます。
訓練施設担当者から説明を受けられる施設見学会というのもあるそうです。

自分の場合、最初にPCスクールの無料カウンセリングにいったら、カウンセラーに「こういうのもありますよ」と紹介されました。

その後、コースを選択し申し込み。訓練校による選考テストを受けます。

テストはコースによって違うでしょうけど、自分の場合「面接」と「一般常識、国語や算数などの筆記試験」でした。

事前に詳しい内容を知らさせていなく、何も準備せずに臨むようなものだったので、本当に最低限のレベルを見極めるという感じだと思います。

もちろん、コース内容についての知識や、業務経験がなくても問題ありません。

定員制なので重要なのはテストの内容・難易度より倍率の方だと思います。
人気のある講座だと十分落ちる可能性はありますし、落ちたという話も普通に聞きます。

通常の訓練は私服ですが、面接は全員スーツ着用でした。

「求職者支援訓練」の注意点

一応補足すると、訓練は「就職のために学習したい人」のためのものです。
「給付金目当て」で受けるものではありません。

生活保護費の不正受給が問題になってますが、「訓練の給付金」の不正受給も結構問題視されています。
東京都の要項にも次のようにあります。

「「求職者支援訓練」は、熱心に職業訓練を受け、より安定した就職を目指して求職活動を行う方のための制度です。このため、一度でも訓練を欠席(遅刻・欠課・早退を含む)したり(やむを得ない理由を除く)、ハローワークの就職支援(訓練修了後の就職支援を含む)を拒否すると、「職業訓練受講給付金」は支給されません。また、これを繰り返すと、ハローワークから支援指示が取り消され訓練受講の継続ができなくなるほか、訓練期間の初日にさかのぼって給付金の返還命令等が行われることがあります。」

自分が受けた際も厳しく注意を受けた記憶があります。
資金は当然税金なので、この辺は念頭においた上で検討するべきですね。

「求職者支援訓練」体験談

受講したのは「Webデザイナー」専門の講座ではなく、「ビジネス・IT/Webのスキル」全般の基礎知識を習得できる総合コースでした。

「求職者支援訓練」は民間のWebスクールなどに委託していて、自分が通ったのはナガセPCスクール。
(結構メジャーなところだったのに、さっき検索したら今年閉校していて驚いた…)

実をいうと当時はWebデザイナー以外の職を考えていて、主にその資格取得のための勉強をしてました。
その仕事には資格以外にもやはり基本的なPCスキルが必要で、当時自分はPCも完全に初心者。

そんな中、求職者支援訓練(旧・基金訓練)を知って、コース内容に「OAスキル」が含まれてたので受講することにしました。

カリキュラム内容

期間は半年間の週5日。時間はだいたい09:00~16:00。
カリキュラムは主に次の6つ。

  • ビジネス基礎・コミュニケーション能力・一般常識
  • パソコン・インターネット基礎
  • オフィスソフト(word、excel)
  • プログラミング(データベース)
  • CAD(製図ソフト)
  • Webデザイン(photoshop、illustrator、flash、dreamweaver、html、css)

しかし、改めて見ると相当幅広いですね…。

毎日6つの分野をこまめにやるのではなく、それぞれの科目を集中的にやって、終わったら次の分野、という感じでした。

Webデザインのカリキュラムは時代によって変わっているでしょう。
もうflashはやらずに、「スマホサイト、レスポンシブデザイン」あたりが盛り込まれていると思います。

最初は主に「パソコン基礎、オフィス」が目的で受講しました。
でも、後半の約2か月間ホームページ制作の授業を受けるうちに、Webデザインの興味が増してきて。最終的に当初勉強していた資格を捨てて、Webデザイナー方面での就活に方向転換したという流れです。

そう考えると、基金訓練は自分の人生を変えてくれた一番の転機と言えるかもしれません。

WebデザインかDTPかで迷っていた時も(最初は本好きなのでDTPデザイナーを希望していた)カウンセリングで「これからはWebデザインの方がいい」という言葉でWebデザインを選んでますし。

そういったキッカケをくれたので、すごくありがたい制度だったと思います。

受講してた方の属性

本当に幅広かったです。
20前半から50代まで。男女比も半々。

経歴も普通に元学生、元サラリーマンから元プログラマー、現役漫画家アシスタントまで様々。
先生も様々でしたが、ビジネス・一般常識関連の方は年齢層が高く、CAD、Web関連の方は自分と同世代(20後半)でした。

「求職者支援訓練」のメリット・デメリット

「求職者支援訓練」のデメリット

デメリットから。大きなものとしては4つ。

  1. カリキュラム内容だけで実務レベルに達するのは難しい。
  2. 求人を紹介してもらえるわけではない。
  3. 中にはモチベーションの低い人もいる
  4. 給付金がもらえない場合もある
カリキュラム内容だけで実務レベルに達するのは難しい。

キッカケとしては大きかったですが、講座の内容的にお勧めできるかというと、正直あまりです…。

受講後、就職できるレベルになるのは相当難しいという印象です。

授業の内容はみんなで一緒に少しずつ教科書の内容をこなしていくというもの。
実務レベルとは程遠い内容で、参考書の内容を理解するのがやっとという感じでした。

Webデザインでは実際手も動かして制作もしました。でも、作るのは参考書に載ってるサンプルのみ。
一応最後にオリジナルも作りましたが、本当にそれぞれが好きな感じに作って発表しただけでした。

そこで、細かくチェック修正が入れば、まだ有意義だと思いますが、到底そこまで時間と手間をかけられる感じではありませんでした。

Webデザイン科目以外も広く浅く、本当に最初の一歩目のキッカケという感じ。
その後、自分で突き詰めて続けられるかがほぼ全てだと思います。

なので、自分のやりたいことがハッキリしていて、金銭的に問題なければ民間の有料スクールをおすすめします。少なくともそちらの方が近道です。

就活の際にも「求職者支援訓練」修了と履歴書に書いても大きなプラスになりません。
下手すると、マイナスの先入観すら与えると思います(制度の意義に関わる問題だけど…)

でも、上記のような講座内容からいってまず「実務レベルには達してない」人だと判断されやすくなります。

実際自分も訓練修了後は、まともに「一からオリジナルサイトを作れる」というレベルからはほど遠かったです。(というか、まだタッチタイピングすら危うかった…)

求人を紹介してもらえるわけではない。

訓練を修了したからといって、求人を確実/優先的に紹介してもらえるわけではありません。
結局、自分の実力とやる気の問題になってきます。

当時20人いた訓練生で修了後すぐにデザイン関連で就業できたのは一人だけ。
(元々デザイナー志望者は5、6人でしたが)

その一人もデザイン専門学校の卒業生だったので、99%そちらで培った力によるものだと思います。

中にはモチベーションの人もいる

やる気は人によってまちまちでした。
やはり、無料で受けられることもあって、有料のスクールと比べるとモチベーションに差が出てくると思います。
正直、明らかに給付金目当てだろうなという人も…。

出席して帰りに遊んでるような人もいたので、変に悪影響を受けないようには注意した方がいいかもしれません。

年齢層が比較的高め、人数も少なめというのもあり、自然とモチベーションが上がるような環境ではなかったです。

次の記事で紹介する「若者チャレンジ」は、全員20代、営業志望多め、大人数(150人前後?)。
(わかりやすい表現なので使うと)いわゆる「意識高い系」の空気感で同じ職業訓練でも全く別世界でした。

給付金がもらえない場合もある。

給付金がもらえない場合、その期間の収入を考えなくてはなりません。
訓練は普通に週5で半日以上はあるので、仕事と両立するとしたらそこそこ大変になると思います。

自分は土日働いていたので、半年間はほぼ週7で稼働してました。
そんなキツかった記憶はないですが。

クラスの人で給付金をもらってたのは約半数。
もらってない人でも20代前半で実家暮らしという人もいて、特に働いてない人の方が多かったですね。

「求職者支援訓練」のメリット

自分が考えるメリット4つと制度をより有効に利用するためのポイントを3つ挙げます。

  1. 無料or給付金をもらって学習ができる。
  2. キッカケになる。次の就職までの「猶予期間」になる
  3. ビジネス基礎や研修も受けられる
  4. 講師や訓練生に相談できる
無料or給付金をもらって学習ができる

言うまでもありませんが、何よりも大きいポイントなので一応あげときます。
Webデザイン関連だとアドビソフトを無料で利用できるのも大きいですね。

テキスト代は全員かかりますし、交通費と昼食代でもそこそこの出費はありますが、受講料を考えると小さいと思います。

キッカケになる。次の就職までの「猶予期間」になる

これも大きいメリットです。
例えば、次のような状況・心境の時に利用すると有効だと思います。

  • Webデザインに興味あるけど、まだ本職にするほどかわからない。
  • 実際に教えてもらって体験する中で、感触を確かめたい
  • 離職中だけど、次どう動こうか決めかねている

こういった時に数ヶ月から半年間、通学しながら方向性を探れます。
ただ迷ってるだけより、次の就活で空白期間に何をしていたかも堂々と言えます。

特にWebデザインの場合、ツールを一式揃えるのも有料スクールに通うのもお金がかかります。
スクールに通ってる最中に、「やっぱ向いてない、楽しくない」となるとコスト的にも時間的にも痛いです。

最初の一歩として踏み出しやすいのがこの制度のメリットです。

ビジネス基礎や研修も受けられる

専門コースでもビジネス基礎を取り入れてるところは多いと思います。
社会人未経験だと敬語の使い方・名刺の渡し方などから教えてもらえるのでありがたいです。

履歴書や職務経歴書の書き方を教わって、実際書いたものをカウンセラーに添削もしてもらえました。
また、企業の方に訓練校に来てもらってセミナーを実施したり、全員で企業に赴いての企業見学などもありました。

講師や訓練生に相談できる

訓練校の方や各講座の講師、訓練生とも相談ができます。
学生の頃の就活と違って、完全に個々で動かないといけない中、心強い環境だと思います。

次に自分の経験を振り返ってみて思う「求職支援制度をより有効に活用する方法」を3つほど挙げます。

  • ある程度独学で勉強してから受ける
  • 授業時間以外も教室を使える訓練校を選ぶ
  • 専門分野に特化している講座にする
ある程度独学で勉強してから受ける

これは有料スクールでも同様です。
理由は本当に全くの初心者だと質問することもなかなかできないからです。

教わったことを理解するのがやっとで、何を質問すべきかどう質問したらいいのかすらわからない。

これはせっかくプロに質問できる環境なのにもったいなかったです。
ある程度独学で勉強してると発展的な質問ができて、より有意義になると思います。

授業時間以外も教室を使える訓練校を選ぶ

訓練校によって、放課後も自由時間で学習ができるところとできないところがあります。
自分の場合は、訓練以外の授業があるため、放課後は使えませんでした。

特に自宅にまだ制作環境が整ってない場合はチェックした方が良い点です。

専門分野に特化している講座にする

科目が多い方がお得な気がするかもしれませんし、当時そう思ってました。
でも、やりたいことが決まってるなら特化したコースの方がいいです。

理由は単純です。
一つは広く浅く基礎知識を学んでも、後々のことを考えるとほぼ無意味です。
結果論になりますが、建築CADとかは今考えると無駄な時間でした。

特化したコースだと半年間丸々Web制作が学べるので、今思えばそちらの方がよりためになったでしょう。

主観で率直な感想を言えば、20代中盤までで半年Webに特化したコースを受けたら、訓練のみでも結構就職もいけるんじゃないかと思います。

もう一つは、「同じ興味をもったコースの方が横のつながりができやすい」です。
自分の受けたコースは分野が幅広くて、20人いてデザインに興味があったのは5、6人。

単純に20人いて全員Webデザイナー志望の方が、相談もできるし、何より楽しかっただろうなと思います。
就職後も横のつながりができやすいという利点があります。

さいごに

「職業訓練・求職者支援訓練」の体験談でした。

これから、学習・就職を考えてる方は選択肢の内の一つとして検討されると良いかと思います。
特にまだ方向性が漠然としている方がいたら最初の一歩としてオススメの制度です。

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