webデザイナーがクラウドソーシングのデザインコンペを体験してみた感想 ーメリット編

昨年(2015年)一年間、クラウドソーシング(以下 CS)のデザインコンペに参加してました。その経験から考えたメリットとデメリットを2回に分けてまとめたいと思います。
今回は前置きとして【この話題にまつわる記事/コンペの概要】と【コンペのメリット】について。
書いていて気付いたのは、『社会的な視点』でどうとかではなく、【経験の浅いデザイナーにとって】という要素が大きいです。
特にメリットについては。
それらを踏まえて読んでもらえたらと思います。
クラウドソーシング/コンペ問題を提起した記事
自分は駆け出しの域を出ていないwebデザイナーです。
それでもこの問題についてはコンスタントに目にしてきました。
最初に覚えているのがこの記事(2013年2月)。
これはコンペではなく、『一年間契約のデザイナーを無報酬で募集』という内容。
『デザイン業務に対する無報酬』という点ではコンぺと同じ問題を含んでいるかと思います。
一年、通常のデザイン制作を複数こなして無報酬。。改めて思い起こしてもなかなかですね…。
昨年ではこの記事(2015年9月)。
デザインを料理に置き換えて、コンペに異議を唱えています。
いろんなシェフに声をかけて料理を作ってもらい、一番満足させてくれた人だけにお金を払い、他の人たちには帰ってもらいます。あるいはスーツの仕立てでも何でも構いません。
要するに参加者のほぼ全員にタダ働きを依頼していることが問題なのです。
デザインだとあまり気付かないかもしれませんが、他の業種に置き換えると分かりやすいと思います。
また、国内/ネットの記事以外でも例えば、この本でもデザイナーに注意を促しています(2013年出版)。
『デザイナーとして起業した(い)君へ。成功するためのアドバイス – Work for Money, Design for Love』
『好きでやっている仕事だから、タダでも喜んでやってくれると、考えている人がいる(P.59)』
『どんな製品やサービスを求めているかに関係なく、何かをタダで手に入れられると信じている人は、信じられないほどたくさんいる(P.60)』
最近では、2016月2月のこの記事。
主にクラウドワークスをエンジニアを安く買い叩く温床として批判しています。
批判というか、『クズが発注してバカが請けるサイト』と全否定してます。
『安く買い叩く/叩かれる』のが『クズ』で『バカ』なら、
高確率でほぼ全員が『無報酬』になるデザインのコンペ案件は一体どうなるんだろう…??
と、首を傾げざるおえません。。
もう一つ。↓も結構話題になりました(2014年2月)。
これも正確には、CSのプロジェクト方式におけるクライアントに対する批判ですね。
(コンペ/プロジェクトについては後述。リンク先の記事にも説明があります。 )
これ以外もこの話題周辺で目にした(制作側の)記事は否定的なものが多かったです。
主旨の確認
一旦話を戻しておきます。
ここでの意見はクラウドソーシングにおけるデザインコンペについてです。
CS以外のコンペや、CS全般に対するものではありません。
理由はそれ(CSのデザインコンペ)しか経験してないから。
ランサーズのデザインコンペ案件とは
先にランサーズの『コンペ』方式ともう一つの『プロジェクト』方式の概要を。
ランサーズの『ご利用ガイド』からの引用です。
クラウドワークスはあまり利用しませんでしたが、大枠のシステムは同様かと思います。
ランサーズでは「コンペ方式」と「プロジェクト方式」という2種類の仕事の方式があります。
「コンペ方式」は名前の通り、コンペのように、依頼に対して直接仕事がされます。ロゴ制作を依頼したら、ランサーは依頼に基づいてロゴ画像を直接提案してくれます。
「プロジェクト方式」は、まずは仕事依頼をして、私ならこうやります!という見積りを提案します。その見積り(納期や予算など)や評価・実績などからクライアントが発注を行い、プロジェクトが開始されます。
コンペもプロジェクトも複数のランサーが提案して、その中から依頼主が選ぶ点は同じ。
大きな違いは、コンペは実際に作った制作物を提案し、プロジェクトは見積もりを提案し、制作するのは当選後、という点。
プロジェクトについては置いておいて、コンペについてもう少し詳しく。
↓コンペ案件の依頼ページのスクショ。
流れとしては、依頼主が、
- 概要・特徴
- 依頼詳細
- ページ数
- 希望イメージ
- 納品ファイル
- 補足説明
を提示し、その要望を汲んで、デザイナーがデザインカンプを作成、
スクショの提案ページからカンプ画像をアップして、それを依頼主が選定するという流れです。
質問がある場合はページ下部の『質問掲示板』でやりとりができます。
また、先方がカンプで使用してもらいたい画像があれば、『添付ファイル』からDLできます。
自分は昨年、約20のコンペに参加しました。全部webサイトのコンペです。
(ほぼトップページの1ページのみ。中には+下層2ページとかあるけど、さすがに厳しい…)
戦績は3勝。
その結果に対しての感想は単純に『残念。もっと腕を磨かないと』です。
クラウドソーシングのデザインコンペ案件のメリット
では本題。メリットから。
① 経験を積める。スキルを磨ける
これがコンペに参加した一番の目的で、一番成果として実感した部分です。
最初に書いたように、発展途上のデザイナーとして目先の利益より経験を重視してます。
そこで普段作らないジャンルのサイトを作る機会として利用していました。
なので、参加したコンペのジャンルはバラバラです。
新しいジャンルのものを作るたびに、同ジャンルの色々なサイトを検索して研究。
勝率や効率重視でいけば、似たジャンル、得意なジャンルを選んだ方が当然良いです。
でも、自分は経験優先でコンペに参加してました。
コンペなら他の方が作ったのものも見られるし、それも含めて勉強になります。
ただ、これは先に断っているように完全にプロ未満の視点だと思います。
『練習で架空のサンプルサイトを作っても100%お金にならない。
コンペなら実践に近い形でサイトを作れて報酬も発生するかもしれない。』
というWebスクールの生徒みたいな考え方です。
プロが通常の業務として行うものとしての評価とは言えないでしょう。
もう一点『スキルアップ重視』の発想でメリットをいうと、『作業の範囲を絞れる』ことです。
制作には打ち合わせからコーディングなど様々な作業が付随して発生します。
自分はデザイン中心で、分業して制作するのが理想なので、他の作業に時間をとられないのが好都合でした。
(コンペならワイヤーフレームも最初に提供してもらえ、大半がカンプを提出したら終わり。
② ポートフォリオとして活用できる ー 他の仕事につながる
2つ目。これも消極的な理由かもしれませんが。
上に書いたようにコンペで当選し、報酬に繋がったのは3件だけです。
でも、コンペで作ったカンプはポートフォリオとして自分の実績になります。
現実でも活用できますし、ランサーズのプロフィールでも基本的に公開されています。
そのポートフォリオを閲覧した他の依頼主から、案件に直で招待してもらうということもあります。
実際自分もポートフォリオを見てもらって、現実でもランサーズ内でも他の依頼に繋がったものがあります。
提案して落選したコンペ案件の依頼主から、『別件を直接依頼できますか』というお話もありました。
歯医者のコンペに提案して、その作品をみた他の歯医者さんからプロジェクトに招待されたということもありました。
(『招待制』については→ご利用ガイド -「クライアント編」)
直接依頼で実績を積むと信頼アップに繋がり、さらに良い循環が生まれると思います。
結果的に報酬としては、コンペでの当選金額の倍以上は、コンペの提案から波及した依頼で得られました。
そして、それは今後も継続依頼を見込めるものです。
2016年に入った辺りから、募集の一覧にクライアントが申告する『継続依頼あり』というタグも追加されました。
そういう案件は単発の当選金額以上を見込める魅力的な案件と言えます。
③ デザインコンペは営業の一種
これはメリットというか、肯定的意見。
よく他の業種を引き合いに出してコンペの不当を訴える意見をみるので、同じく他の業種と比べて肯定的な意見を出してみます。
2つ目のメリットに付随して言うと、コンペも営業に通じるものがあります。
コンペも、営業のように売り込みの過程の一つと見なせます。
営業も成就しない可能性を前提に自身や製品を売り込みます。
大半はコンペ同様、時間とスキルを無駄に差し出していることになります。
営業で歩合制の割合が大きい場合は、対価を得られないリスクも高いです。
一旦成就しなくても後々他の契約に繋がる可能性がある点や、金銭的な損失を被ってはいない点も似ています。
そういった営業活動が一般的なものだとしたら、デザインコンペ一種のも営業としてみなせる、と、経験してみて思いました。
クーポンサイトを利用して思うこと
自分はちょくちょくクーポンサイトで、整体を利用します。
そこでの相場は通常1時間3000円〜6000円のところ、1000円〜2000円位。
クーポンサイトの取り分(整体師さんに教えて貰った)や、諸経費引いたら、時給数百円。
実働だけ考えたら、到底割に合いません。
そのチケットで数か月ほぼ埋まってるという整体院もありました。
それでも、『広告としてやクーポンきっかけでリピーターになることを期待して利用してる』と言ってました。
つまり営業活動の一種だと。
それはコンペも同じです。
そんなクーポンが問題にならないなら、コンペもありと見なしていいんじゃないでしょうか。
さいごに
メリット・肯定意見を挙げてみました。
身も蓋もないことを言えば『十分経験があり、十分依頼を見込めるデザイナー』であれば、メリットには数えられません。
なので、やはり『スキルアップを望める場』『デメリットをのんだ上での営業ツールとして』という、控えめな肯定意見になります。
社会的なレベルにおいては『存在の是非』自体を問われます。
でも、個人的なレベルで言えば『あるものはあるんだから、それをどう活用するか』という視点の方が重要だと思います。
そういう意味では今後も利用の仕方を考えていきたいと思ってます。